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【サイエンスフォーラム通信5月 臨時号】        2011.5.20 発行
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《 読者の皆様へ ―  原料原産地表示と栄養成分表示の行方 》

1.    原料原産地表示の行方

5月16日(月)、消費者委員会「原料原産地表示拡大の進め方に関
する調査会」(座長:田島  眞  実践女子大学教授)の第4回会合が
開かれ、いよいよ論点整理に入りました。
 
会の冒頭、田島座長から「とりまとめに向けてのたたき台」が示されま
した。「原料原産地表示の拡大の必要性は、22年度に定められた消費者
基本計画にも提示されており、消費者の選択権を確保するためにも拡大
を進めることが求められている。」とした上で、主として下記の6項目
を論点として提起されました。

1)  使用する原料が頻繁に変わる商品の表示のあり方
2)  中間加工品を原料とする加工食品の原産地表示はいかにあるべきか
3)  中小メーカーにおける実行可能性をどう考えるか
4)  現行の50%ルールの見直しはあるか
5)  表示を容器包装以外で対応する考えはあるか
6)  原料原産地表示を拡大した場合の影響

当日の出席委員は下記の7名(敬称略)。阿南  久委員(消費者団体連絡
会事務局長)は欠席されました。

    田島    眞  実践女子大学生活科学部教授 *座長
    日和佐信子  雪印メグミルク(株)社外取締役 *副座長
    阿久澤良造  日本獣医生命科学大学応用生命科学部長
    迫    和子  (社)日本栄養士会専務理事
    立石  幸一  JA全農食品品質・表示管理部長
    山浦  康明  日本消費者連盟事務局長
    山本  創一  (財)食品産業センター参与

当日17時30分に始まった会議は19時の終了まで、まさに“激論”の連続
でした。議論が沸騰したのは、「加工食品にどこまで原産地表示を求め
るべきか」「50%ルールを見直すべきか」の2点です。

下記の意見を強硬に主張したのは立石氏と山浦氏の二人です。

生鮮品と同様、加工食品にも原産地表示を義務化すべき。消費者は商品
の氏素性を具体的に知りたがっている。少なくとも主原料を公開すべき。
表示の一元化を目指して、食衛法、JAS法の垣根を越え情報公開の視点
から表示の方向性を決めるべき。50%ルールは極めて問題が多い、」
「7月に発効される米トレーサビリティ法との整合性をどうするのか。
他の食品を義務化からはずすと米との整合性がとれなくなる。そのよう
な事態はおかしい。」

これに対し、迫氏、山本氏を始め他の委員から一斉に以下の反論が
展開されました。

「原料原産地表示の拡大を消費者は本当に求めているのか。この点の
検証が極めて不十分。Codexも加工食品の原料原産地表示については
「議論する必要性が認められない。」として審議を中止している。
消費者からも加工食品の原産地に関する問い合わせは、大きな事件の
直後を除けば普段はほとんど無い。」

「生鮮品と加工品では原料原産地表示の必要性の有無が明らかに異な
る。原料原産地は安全性の問題ではなく、これによって加工食品の
品質が左右される訳ではない。“始めに拡大ありき”で議論を進める
べきではない。表示の義務化は、あくまで生鮮に近いものに限定すべ
き。」

「義務化は直罰規定を伴うものであり、情報公開はあくまで企業の任意
事項。義務化を前提に情報公開の議論をすることは全く矛盾する。」。

「実行可能性が最も懸念される。無理に義務化すると逆に偽装表示を
生み出しかねない。偽装を防止する仕組みや対処方法を事前にきっちり
組み立てておくことが不可欠。」

「50%ルールは妥当であり、生鮮品とすべての加工食品を現時点で一律
に義務化することは全く時期尚早。その必要性があるとも思えない。」
 
両グループの意見が平行線を辿る中、消費者庁の担当官から「JAS法の
表示は品質に限定している。」との発言があり、座長を始め全委員から
「それはおかしい。表示はあくまで商品選択の判断材料であり、品質
以外のものを表示出来ないということはないはず。」と猛反発を受け
ました。

これに伴い、日和佐氏から以下の発言がありました。

「JAS法は品質に限定しているが、加工度が上がってきて原料原産地
による品質上の差が無くなっており、根本的なところで矛盾を来して
いる。品質の概念や定義があいまいで、その根拠も乏しい。品質の差
で原料原産地表示をすべきと考えるのか、あるいは情報提供として捉
えるのか、この点をもっとしっかりと議論しなければいけない。」
 
議論の過程で、「生鮮品の場合、原産地が品質の差に関わるという指摘
はおかしい。品質面では国産、海外産ともほとんど変わらない。」との
立石氏の発言に見られる通り、原産地表示が品質上の選択の目安ではな
いとの認識は全委員一致していることが明らかになりました。

会議の終盤、座長の田島氏から「表示の共同会議で最後に示された2つ
の要件(下記参照)を基本にとりまとめる方向にもっていきたいが、
どうか」との意向に対し、山浦氏より「座長のまとめ方には賛同出来
ない、意見がまとまらなかった実態を踏まえ、“両論併記”をお願い
したい。」との発言があり、立石氏も同調されました。
 
[参照]要件1:原産地に由来する原料の品質の差異が、加工食品と
                しての品質に大きく反映されると一般に認識されて
                いる品目のうち、
                               
        要件2:製品の原材料のうち、単一の農畜水産物の重量の
                割合が50% 以上である商品
     
情報公開と義務化の議論が次第に混在し、収拾がつかない状況で当日
の会議は終了しました。しかし論点に関する議論はあと1回のみ、6月
8日に行われる予定で、最後の第6回会合(7月6日)では報告書のとり
まとめに入ります。かなり強行スケジュールです。

各委員の発言にある通り、これまでの4回の会合で必ずしも掘り下げた
議論がなされてきた訳ではなく、事務局(消費者庁)のシナリオにも
とづき進められてきた感があります。その点では、本日の会議で全委
員が消費者庁の認識に反発を示したことは意外とも言え、今後の事務
局側の”幕の引き方”に警戒心をもって注視すべきだと思います。
今後の検討の状況を是非とも皆様自身の目で見守り、行政動向の実態
を判断して戴ければ幸いです。7月の報告書に注目です。
 
2.    栄養成分表示の行方

 5月18日(水)、消費者庁の第5回「栄養成分表示検討会」(座長:
坂本 元子 和洋女子大学学長)が開かれ、論点整理に入りました。
当日の配布資料および出席委員は下記サイトでご覧戴けます。

      http://www.caa.go.jp/foods/index9.html#m01

 思えば半年前の第1回会合の冒頭、挨拶に立った内閣府特命担当大臣
 岡崎トミ子氏の「トランス脂肪酸の表示を含め栄養成分表示を義務
化するため、活発なご討議をお願いします。」の言葉とは裏腹に、
会は毎回静かで、ほとんどの時間を入門的な“レクチャー”に費やし、
実質的な議論はこれまでほとんどなされていません。

2日前、「原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会」で“激論”
を体験した者としては、若干衝撃を受けた次第です。原因は不明です
が、もしかしたら前回(本年4月)の第4回検討会で委員の一人である
仲谷正員氏(日本チェーンストア協会)の「消費者からの栄養成分に
関する問い合わせは全相談件数の僅か2.7%。賞味期限と原産地表示
への関心の方が圧倒的。」との指摘に関わることかも知れません。
 
仕掛ける消費者庁と委員の意識、ベクトルの乖離は相変わらずで、
第5回は「栄養成分表示制度のあり方」を論点整理の議題としながら
実際には会議時間の過半を5件の資料説明に費やし、その後「栄養成
分表示の目的および対象となる栄養成分は何か」「栄養表示は誰のた
めのものか」を話題とした意見交換に入り、以下の散発的な意見が聞
かれた程度でした。

「生活習慣病に何が関わっているかを明らかにすることで、重要な
栄養成分をピックアップすること。エネルギー、三大栄養素、ナト
リウムは優先順位が最も高い。」
「脂質に関しても表示が不可欠だと思う。糖類も非常に重要。」
「不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸が対象として入ってくる。」
「誰のための表示かを考える際、とくに男性にとって分かりやすい、
利用しやすい表示にすることが大切だと思う。女性は従来から栄養
表示をかなり活用しているが、男性、とくに20代、30代、40代に無関
心層が非常に多い。」
「女性の教育も大きな課題。女性が次第に食への関心を失いつつあり、
食育だけでは不十分で、食全体を根底から捉え直すことが必要ではな
いか。」
 
以上が会議の実態です。上記の通り「トランス脂肪酸」については
名称が一度だけ委員の口に上がりましたが、これについての議論は
全く無く、これは前回の会合も同じです。

「日本人の食事摂取は本日の資料説明を伺う限り、それほど過剰な
状況ではない。」との坂本座長の発言もあり、これまでの議論を傍聴
して、「一体何が問題なのか」が一向に鮮明にならない点を歯痒く感
じた次第です。
 
但し、事務局(消費者庁)がまとめた当日の配布資料1「「栄養成分
表示検討会」における委員発表等の概要」(第4回まで)を見ると下記
の通り重要な点はいくつか委員から指摘されており、本資料は是非
ご覧戴きたいと思います。以下は資料1からの抜粋です。
 
[栄養成分表示のあり方]

・健康の維持増進や生活習慣病予防のために重要となる栄養成分や、
  過剰もしくは不足している集団が大きい栄養成分など、多くの国民
  のニーズにあった栄養 成分の表示を優先していくべき。

・従来の栄養成分表示は事業者主導であって、消費者が十分理解する
  機会のないまま広がってきたため、食生活の改善や病気の予防に
  十分効果を上げているとは言えない。

・現在の加工食品は、使用されている原材料やその量が目に見えなく
  なっている。食品に含まれる栄養成分の含有量が分かるように表示
  すべき。
 
 [検証作業の必要性]
 
・健康リスクについても日本特有の兆候がある。欧米のデータに引き
  ずられて、日本人にとって優先順位の高い対策が効果的にとられて
  いないのではないか。
 
・栄養成分表示を見直す際は、その表示の目的や、目的に関する検証
  可能なゴールを設定することが大事であり、その評価結果を踏まえ
  てさらに改善を図っていくことが必要。
 
  [実効性における課題]

・義務化となった場合に、地方自治体がどこまで何をしていくのか
 (どのくらいの献体数を検査するのか、対応するための人員の確保
  をどうするのか等)を明確にしていく必要がある。

・行政側の監視体制は十分でなく、栄養成分の検査を実施できる自治体
  は少ない。各自治体が同様な監視体制を有さなければ、広域に流通
  する食品に対して制度の公正性を維持することは出来ない。
 
・現在、自治体においては指導のみが行われているが、今後はモニタ
  リング体制の整備も必要。

・分析方法の正確性や信頼性の確保、地域性や季節性による成分量の
  差異を勘案し、義務表示の対象となる食品の選択、さらにはそれを
  支援する仕組みの整備が必要。

本検討会は次回(5月30日)にもう一度論点整理を行い、6月27日の
第7回での報告書(案)の審議を経て、最終の第8回(7月下旬)で
報告書のとりまとめを行います。

一度として深掘りの議論のない本検討会ですが、恐らく行政上の筋書き
が予め存在するのではないかと推察されます。どのような報告書案が出
てくるのか予断を許しませんが、審議の過程をお伝えすることで少しで
も行政の実態を業界の皆様に知って戴きたく、これからも傍聴を続ける
所存です。                                           
                                                    以上
                        
                           株式会社 サイエンスフォーラム
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